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新着情報 [2011]

2011年12月19日

第15回文化庁メディア芸術祭 受賞のお知らせ

12月15日、第15回文化庁メディア芸術祭賞について発表が行なわれ、
大変うれしいことに、ASIFA-JAPANから4名の方々が受賞されました。

- 山村浩二氏が、短編作品『マイブリッジの糸』で、アニメーション部門優秀賞受賞
- 小野耕世氏が、スペインのマンガ家パコ・ロカの作品『皺』の翻訳で、マンガ部門優秀賞受賞
- 水江未来氏が、短編作品『MODERN No.2』で、アニメーション部門審査委員会推薦作品選定
- 木下小夜子氏が功労賞受賞
受賞者の皆様に、心よりお祝い申し上げますと共に、今後益々のご活躍を祈念いたします。

第15回文化庁メディア芸術祭 公式サイト

<アニメーション部門 優秀賞>

作品名:『マイブリッジの糸』
受賞者名:山村 浩二


【作品概要】 1878年に馬の連続動作を撮影することに成功し、映画の誕生に多大な影響を及ぼした写真家エドワード・マイブリッジの人生と、現代の母と娘の情景を描き、時空を超えた2つの世界の対比によって「時間」に思いをめぐらせるアニメーション。カリフォルニアと東京、19世紀と21世紀を往き交いながら、マイブリッジの波乱に満ちた人生を幻想的に描く一方、慈愛にあふれた母娘の光景が印象的に登場する。「時間は止められるのか?」という問いをモチーフとした、日本とカナダの共同製作作品。

【贈賞理由】 19世紀初頭の写真家、エドワード・マイブリッジの残した動物や人の連続写真にお世話になったアニメーターはアニメーション史の中にも数多くいるに違いない。そのマイブリッジの価値ある仕事と不幸な人生、そして1870年代と現代の母娘の人生を、時間を記号として記録した“懐中時計”というモチーフを軸に表現するだけでなく、奇妙な構成を持ったバッハの「蟹のカノン」の曲に合わせて糸を繋いでゆく......まるでパズルのような作品である。しかも、連続写真で知られるマイブリッジの人生を、静止画を断続的に撮り、投影することで、映像という時間表現(=アニメー ション)にしたのが、アニメーション作家であることも興味深い。 この作品を見ていると、人が様々な運命を背負って生きるということさえも、断続的な記録のひとコマとして過ぎ去ってゆく時間である、というような哲学的な情感が伝わってくる。そんな振り幅の広い題材を12分50秒という短編として挑んだ山村浩二というアニメーション作家の仕事の深さにも触れた思いがした。

<マンガ部門 優秀賞>

作品名:『皺』
受賞者名: パコ・ロカ(著)/小野耕世、高木菜々(訳)


【作品概要】 息子夫婦に連れられて老人ホームに入ることになった元銀行員の エミリオ。多くの入居者がそれぞれの「老い」を生きる中で、「アルツハイマー」という残酷な現実と向き合い、次第に記憶を失っていく。2007年にフランスで刊行後、スペイン、イタリアで も出版され大きな話題を呼んだ。人生の長さとともに刻まれる「しわ」のように、さりげない描写を静かに積み重ね、マンガならではの手法で「老い」という現代的なテーマを見事に描き出した。

【贈賞理由】 日本ではあまりなじみのなかった、スペインのストーリーマンガ作品。本格的な翻訳出版は、これが初めてという。認知症の兆候が出始め、老人ホームに入所することになった元銀行員のエミリオは、そこで暮らす老人たちの様々な老いの姿と出会い、自身の症状の進行と向き合うことになる。同室のミゲルは、小ずるく皮肉屋だが何かとエミリオを気遣い、2人は心を許し合う。やがてエミリオの認知症が抜き差しならなくなった時、ミゲルが見せた友情は、読むものの心に響く。登場人物たちが本人の記憶の中の年格好で描かれたり、主人公の症状の進行とともに風景や人物の顔が空白になっていったりと、単純なコマ割りに織り込まれたマンガならではの表現も見事だ。「老い」と「認知症」というシリアスなテーマを扱いながら、その描写は時にユーモラスで、優しく温かい。

<アニメーション部門 審査委員会推薦作品>

作品名:『MODERN No.2』
受賞者名: 水江未来

<功労賞>

受賞者名:木下小夜子

【プロフィール】アニメーション作家/プロデューサー。東京生まれ。女子美術短 期大学造形科卒業。’70年代より、アニメーション・メディアを基軸として、制作・開発・教育・振興等、幅広い事業・活動を国際的に展開し、その領域はドキュメンタリーやフィクションを含む映像分野全般に及ぶ。木下蓮三と共に制作した短編アニメーショ ン「MADE IN JAPAN」(’72),「日本人(ジャポネーゼ)」 (‘77)、「ピカドン」(’78)、「最後の空襲くまがや」(’93)、「琉球王国-Made in Okinawa」(’04)等は、各国の国際映画祭にてグランプリや優秀賞を多数受賞。1985年、広島国際アニメーションフェスティバルを企画・実現、以後、総指揮を歴任。国内外の美術館や映画祭のプログラム多数制作。芸術大学や映画祭等での講義・講演・ワークショップ・審査員歴多数。’06~’09年、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)会長を務め、現在副会長、同日本支部(ASIFA-JAPAN)会長。日本アニメーション学会顧問。 大阪芸術大学客員教授。女子美術大学理事。女子美術大学同窓会会長。

【贈賞理由】 木下小夜子氏は1980年代初めから、夫でアニメーション作家の故 木下蓮三氏と共に、蓮三氏が制作した短編アニメーション『ピカ ドン』をきっかけとして、広島で国際アニメーション映画祭の開催を実現するため多大な尽力をされた。1985年、ついに国際アニメーション協会ASIFAの公式承認を得た第1回広島国際アニメーションフェスティバルを開催するに至り、以来、隔年開催を続け、来年で第14回大会を迎えるに至るまで、フェスティバルディレクターとして、現在もエネルギッシュな活動を続けられている。一言で国際映画祭といっても、大半のイベントが大手広告代理店やマスコミ主導の商業色が強いものだった当時、広島という特別な場所で「Love & Peace」を掲げ、広島市との二人三脚で始められた、このアートアニメーションの映画祭は、観客動員から企画・運営に至るまで、そしてこの25年間のプログラムがどれだけ日本の、そしてアジアのアニメーション作家を志す若者たちを刺激してきたことか、その功績は計り知れない。